研究概要の書き方で内定を掴む

エントリーシートを通過させればいよいよ面接。技術系ならば重役や研究所長の目の前でオリジナルの研究概要資料を使って技術発表を行います。

伝わりやすい資料を作る上で欠かせないのは聞く人の立場を考えることです。文系の人なのか、理系の人なのか、大人か子供かで伝え方が変わります。そして伝えるべき内容も変わります。

研究概要は学会発表ではない

多くの学生が学会のポスター資料を改造して就活用の研究概要資料を作成しがちです。専門的要素が詰め込まれたポスター資料は有識者が討論を行う内容としては素晴らしいですが、企業の技術担当者に聞かせるには内容が濃すぎます。

本稿では 化学系で開発職についている筆者としての視点で 、技術面接でいかにウケが良い研究概要資料を作成するのかを記述していきたいと思います。

研究背景の書き方で全印象が決まる

研究概要はまず「なぜこの研究を行ったのか」を記述するところから始まります。研究を始めた背景が分からなければ、その研究に何の価値があるのかが良く分かりません

つまり研究背景は説明する上で最も大切な項目です。同時に聞き手にとっては未知の情報が羅列されるため最も難解な項目でもあります。

研究背景で聞き手の興味を惹けなければアウト

例えば、専門が有機化学の技術者が生物関連の発表を聞くことを考えましょう。「○○という生物の遺伝子を改変して△△出来るようになると、□□病を治療する糸口になります」という発表をされたとします。

聞き手が□□病を詳しく知っていれば「スゴイ研究結果だな今後の進展はどうなんだろう」と興味がわきます。好印象です。

しかし□□病を知らなければ「それって凄いの?」という淡白な感想しか抱けず発表に対する興味は薄いです。なにも印象に残りません。

素晴らしい研究であっても聞き手が興味なければ印象に残らないため、技術系面接官は「平凡な発表だったな」という印象を抱きます。つまり落選です。

しかし皆が知っているような有名な研究なんて殆どありません。多くはニッチな分野のニッチな課題を解決するための研究なのです。

研究概要を一般的事柄に関連付ける

ニッチな研究だけど色々な人に興味を抱かせることが出来れば、面接官の心証が良くなるため合格にぐっと近づきます。

キーワードは聞き手が興味ある事物に関連付けることです。

企業の技術担当者が興味あることはコストです。利益です。お金の話です。

技術者たちはいかにコストを抑えて高付加価値の製品を開発できるかを考えています。興味を引きたければコストを意識した文面を書きましょう。

例えば先程の□□病では、

「現代医療で治療するのが技術的に困難」という視点と共に「現代医療だと完治できず〇○○〇万円かかるが、この方法で上手くやれば十分の一の〇〇〇万円で治療できる可能性がある」という文章を盛り込むのです。

研究背景にコストの話を盛り込むと、技術者でない人も積極的に質問をしてきたりします。企業の務め人ならば誰でも興味を持てる究極のコンテンツこそコスト感覚だと言えます。

研究概要内には開発コストを必ず盛り込むべき

会議の人権費・購入する資材・開発した製品の売価――企業人たちは常にコスト感覚を研ぎ澄ましています。

筆者も”製品の特性は素晴らしいが原価が高すぎてボツになった研究・開発”をたくさん目にしました。利益が全てなので儲かる製品を作れなければ意味がありません。

想定される市場規模・原価は製品の市場での優位性との兼ね合いです。

技術系エンジニアたちは悔しい思いをしてきているからこそ、学生が思う以上にコストという感覚が染みついています。

利用価値のない製品はただのゴミですが、利用価値のある製品でも原価が高すぎるとゴミなのです

研究目的は解決すべき技術課題を書く

研究背景をじっくり説明した後は、研究目的を述べます。

学士や修士の研究期間は2年間ぐらいしかないので結果の多寡は知れています。多くの研究は立てた目標には全然手が届かない状態でしょうが、研究には成果が必要です。

そこで研究目的の書き方としては、大目標を掲げつつ小目標を掲げます。私の研究によって「小さな一歩は確実に進展したぞ!」とアピールするのです。

前述したとおり企業技術者は専門知識に疎い。貴方の研究分野では常識的な現象でも、さも自分が偉業を達成したように見せることが可能です。これはニッチな分野ならではの特権といえるでしょう。

運悪く分野に詳しい人がいたらツッコミが入るでしょうが、僅かでも既存研究との違いを語り、研究活動の意義を話せば案外納得してくれることが多いです。

一般人から見て面白そうな現象は注意を惹きつけます。上手く自分の研究で進展した箇所に繋げて、凄そうに見せることは大切です

難しそうな研究用語は注釈をつける

業界でしか使わないような難しい言葉は別欄を設けて解説しましょう。簡単な絵や吹き出しをつけて背景と絡めて説明できればベストです。

筆者は研究概要内に”研究キーワード”という項目を作って、説明に必須な幾つかの言葉をイラスト入りで表現していました。

説明で重要なのは必ずしも真実でなくてもいい点です。

例えばエネルギーを変換する器官としてミトコンドリアの説明をするならば、ミトコンドリアを□が通ったら、△になる絵とかでいいのです。

研究の重要性を伝えるために必要な用語の意味だけ伝えられればOKです。真実は伝えなくてよい。

研究成果は判明した事実を手短に

研究背景や研究目的を聞いている時点で殆どの人たちは???の状態です。初めから分かっていないのに研究成果を長々と解説しても全く無意味です。

しかし技術について語らなければ研究者としての素養を疑問視されることも事実です。ここは仕方ないので判明した事実を研究用語を使って説明してあげましょう。相手はよく理解していないので、最後に下記のようにまとめてあげる必要があります。

「本研究を纏めると、Aが分かったことでメカニズムを考えた。メカニズムが正しいならばBになると思い実験をすると実際にBが観測できた。またCを補足的に実行すると思った通りになったのでメカニズムは正しいと判断した」

研究で事象のメカニズムが分かってなくとも自分の頭で考えて実験を進めたと言えれば好印象を抱かれます。

企業は自分で研究を進められる学生が欲しい

筆者は就活でよく「研究はどういう風に進めましたか?」という質問を受けました。当時はよくわからない質問をするなあ、と感じていました。

しかし彼らは”結果に対して仮説を立てて自分で検証できる”という能力を見たかったのでしょう。いわゆるPDCAサイクルです。

「キミは教授の言いなりじゃなくて、能動的に自分の力で研究を進められる学生か」という問いに対する答え。これを研究結果中に散りばめることが出来れば、好意的に取られることは間違いないと感じています。

 研究でどの結果を導けば何が証明できるのかを考えるのに苦労した等、自分の頭で研究の仕方を組み立ててやったぞ! とアピールしましょう。

研究概要に活動実績は必ず書くべし!

ポスター発表や口頭発表などの場での実績を研究概要の最後に盛り込みましょう。企業担当者にとって学生のレベルを読み取る指標になります。

発表回数は多いに越したことはないですが、学生生活を通して2-3回程度学会に出ていれば十分かと思います。逆に1回も学会発表経験がないと、研究生としての素養を疑われます。(企業との共同研究なので学会に出られない場合は、その旨を記述しておく方がいいかもしれません)

また研究概要のラストに隙間があれば嘘でも”論文執筆中”と書いておいた方がいいかもしれません。少しでも箔が付くと思います。

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