化学メーカーを選ぶ際に気になるのは企業による年収の差です。ホワイトで年収の高い企業に入るためには情報収集が欠かせません。
情報収集源で思いつくのは就職四季報のような情報誌でしょう。しかし実際の化学企業の年収は情報誌に載っている額とは大きな乖離があります。
どの程度の年収になっているのかを筆者と、化学メーカーに勤務する同期複数人にヒアリングした結果を加味してお伝えしたいと思います。
会社に入る前に想像していた年収とのギャップを埋めるための記事です。
就職四季報の化学メーカーの年収は嘘
就職四季報は就活生で知らない人はいないと思います。別になくても困らないですが、企業選びの際に参考になるので一冊持ってても損しません。
この就職四季報は企業が毎年発行している有価証券報告書の内容を抜粋した内容と企業ホームページにある内容、くわえて東洋経済社がオリジナルで取材した内容で構成されています。
給与やボーナスなどに関しては全て公表値の抜粋なため、就職四季報にしか書いていない情報が見れるわけではありません。
目指している化学メーカーもイメージ向上のために必死です。とくに公表している年収は様々な思惑によって弄っているので内部の実態を掴むのは難しいです。
競合の化学メーカー同士でも平均年収が大きく異なる理由
公表している年収の平均値は統一的な基準で算出された値ではないからです。
ある企業ではアルバイトや派遣労働者の賃金も平均に加えているが、ある企業では正社員だけしか計算していないです。各社どこまでの役職者を計算に加えるのかはバラバラです。
化学素材メーカーなど、他社に製品を卸している企業は従業員給与を高く表記すると儲かっているアピールになってしまいます。
すると方々から製品の値下げを要求される事態に陥りかねないので、敢えて安めに年間給与を算出しています。
化学メーカーの年収1位は三菱ケミカルHDではない
ホールディングス(HD)制を採用している会社では、ホールディングに在籍している社員の平均年間年収が記載されます。
ホールディングには上位管理職が100人ほど在籍しているだけですから、必然的に年収が凄く上昇します。ランキング上位をみるとHD制企業が軒を連ねているので面白いですよ。
就職四季報の価値は、各社の男女別採用数・配属先を確認できることにあります。この欄を読むことで採用ターゲット大学を確認できるため、自分がエントリーした際に内定に辿り着く可能性があるのかを推し量ることができます。
就職四季報を用いた化学メーカーの分析について、詳しくは下記の記事にて解説しているため興味があればご覧ください。
平均年収や待遇を就活四季報から読み解く
化学メーカーで新卒一年目の年収は募集要項から推測可能
公表されている平均年収よりも新卒として自分が入ったときに年収が幾ら貰えるかが重要です。
実は 就職四季報のボーナス情報 と化学メーカーHPにある募集要項から3年目くらいまでの給与額を予想できます。
上記に述べた通り、平均年収はあてになりませんが平均勤続年数・有給取得率・ボーナスは〇か月分といった項目は真実の値です。企業としても答えにくい質問ではないことが理由です。
新卒一年目の給料:
(初任給×12)+(ボーナス〇か月分の半分)
上記の式で計算することが出来ます。大手化学メーカーならばほぼ横並びで400万円弱と考えましょう。企業間で20~30万円ほどしか差はつきません。
同様に新卒三年目の給料も博士卒初任給を用いれば計算可能です。
新卒三年目の給料:
(博士卒初任給×12)+(ボーナス〇か月分)
新卒3-4年目で残業なし500万円というイメージです。これは筆者も友人も意見が一致していたので、ほぼ間違いない値です。
ちなみに残業を加味すると二年目でも500万円はラクに超えます。化学メーカーでは寮がある場合が多いため、貯蓄も貯まりやすいといえます。
役職が付くと収入は一気に上がる
主任など役職が付くことで月給にして4-5万円ほど上昇します。筆者の企業では早ければ30歳くらいで役職が付く人が出てきます。
いわゆる出世レースも5年目から苛烈になってきます。逆にいえば1-4年では大した差は付かない企業が多いと思います。
出世頭は利益に多く貢献する人が多いです。よって営業や開発などのお客さんに濃密に接する機会が多い人がグングンと出世します。逆に基礎研究などのお金を垂れ流している部門はなかなか出世できません。
課長以上になると裁量労働制に移行する
課長や部長などの役職になってくると”会社側”の人間へ属することになるため、労働組合員ではなくなります。
会社側の人たちとは春闘などで待遇改善の懇願書を渡されている側のおじさんたちです 笑。
裁量労働制ではみなし残業として〇時間が初めから給料に組み入れられています。そのため残業した分だけタダ働きになってしまい、筆者個人的にはなんだか可哀想だなと思う次第です。
ただ裁量労働制に移行する役職なら年収で800万円とか貰っているはずなので、まあ仕方ないのかもしれません。
55歳ごろに役職定年になる

化学メーカに限らず、半数の企業で好待遇な役職持ちは55歳ごろに平社員に降格します。これを役職定年と呼びます。
役職定年後は給料は3割はカットされると考えましょう。
55歳だった定年を60歳に改めたときの制度の名残です。ちなみに法が改められたのは1986年です。
そして2025年には65歳定年に法改正されます。つまり昔と比べて10年も多く働くことを余儀なくされるということです。
総支払給与を減少させるために役職定年は55歳のままにする会社も多いでしょう。ますます給料は伸びなくなることを頭の片隅に置いておきましょう。
化学メーカーの年収まとめ
- 就職四季報の年収は参考程度に
- 4年目までは企業間での年収差はさほどない
- 新卒の年収は募集要項と就職四季報を組み合わせれば試算可能
- 役職がつくと一気に年収が上昇する