筆者の就活では3/1に全員で一斉にスタートを切っていましたが、2022年からは新卒一括採用から通年採用へと変更されます。
通年採用にしたということは新卒一括採用を上回るメリットが存在するということになります。その最たる目的は海外でも勝負できる優秀な人材の受け入れだと筆者は感じました。
「スキルのある者を雇い入れられる雇用制度になっていないから是正しよう」という建前です。しかし雇用制度だけを整えたとしても、待遇という本質で魅力がない企業にいい人材は集まらないと筆者は考えています。
通年採用とは、採用形式の変更にすぎない
人口減少が叫ばれるなかで様々なモノの需要も減少の一途を辿っています。
企業は常に利益を上げつづけねばならないため、新規開拓を行い続ける必要があります。すでに日本の需要だけで売上高を伸ばすのが限界にきているため、最近では大企業だけでなく中小企業でも海外と取引を活発化させています。
ネックになるのはグローバル人材をどう手に入れるかです。日本でいうグローバル人材とは要するに――外国語が堪能で、都合よく企業の言うことを聞いて、あちこちに飛び回って仕事してくれる社畜です。
要は年功序列に縛られた安い給料で働きまくってくれる人=グローバル人材という認識です。
それだけ能力があるならば、海外企業にでも引き抜かれて高給を取りながらまったり働くほうが圧倒的に有意義な気がします(欧米など海外ではプライベート優先です。残業とかは殆どしません)。
従って今回の通年採用導入によって人材の質が良くなることは短期的には無いと考えます。10年スパンの長期では少しずつ欧米化が進んでいく予想です。
海外での通年採用では学生は時期に縛られない
日本では通年採用とは言いつつも、どうせ冬頃になると超短期インターンや会社説明会が次々に行われるのは目に見えています。
2020年になっても経団連が定めた3月から採用解禁するよという期間が少しずれるだけでしょう。抜本的な変化は企業も学生も経験がなく戸惑ってしまうので起こり得ません。
アメリカで行われている通年採用では学生側に”卒業と同時に正社員として働かねばならない”という意識はありません。
数年間の企業インターンで十分なお金と経験が得られるため、卒業後はインターンのコネ経由で待遇のよいオファーが来るのを待つという選択肢が多いです。日本ではこういったインターンはIT業界くらいにしか浸透していません。
その根幹にあるのは「インターン=タダ働き」という日本企業と日本学生が持つ謎の共通認識のせいでしょう。海外のように卒業後に通年採用に乗っかろうとすると、卒業後にアルバイトをするしかなくなります。
しかしアルバイト経験は日本企業からマイナス評価を受けてしまう。つまり通年採用で就職時期をずらすという考え方が日本では無理なのです。2020オリンピックもそうですが、タダ働き思想を何とかしなければ通年採用も不可能だと思います。
優秀な人材には相応の対価を払うべき
「通年採用に見直したから優秀な人来て!」といって優秀な人が集まるでしょうか。答えはNOだと思います。もし筆者が外国語堪能でどこでも働ける人間なら賃金・待遇の良さで会社を決めます。
2020オリンピック「無償ボランティア」の話題もそうですが、日本という国は働くことに美徳を求めすぎです。労働なんてのは所詮お金を得るための手段に過ぎないのに、肝心の賃金が伴っていない労働に優秀な人材は集まりません。
でも日本企業もそこに気づきつつあるようです。
ソニーがAI関連のエンジニア職に対して、新卒に最大で730万の年収を提示すると発表したニュースは記憶に新しいです。以前までは最大560万円だったので大進歩ですね!
ただ730万円になる条件はAI関連において『並外れた技術を持った学生』を対象としており、報酬に対するパフォーマンスを求めすぎかなとも思います。高待遇を提示する海外企業はザラにあるでしょうし。
500万円程度なら残業多めだとスキルのない新卒2年目で達成できてしまいます。これまでソニーの提示してきた560万円はさほど優遇されていなかったといえるでしょう。
優秀なプログラマ人材はソニーで年収800万を超える可能性も
ソニーが募集するAI関連エンジニアがどのような業務をするかは分かりませんが、もしシステム設計エンジニアのように裁量労働制が適用できず、残業もしっかり付けられるならば年収800万円は超えてきそうです。
730万円という広告塔を出す大胆さに称賛する声が多いですが、裏を返すとソニーとしても優秀な人材を集めるのに苦労しているのでしょう。
これを皮切りに大企業が人材確保のために賃金を上げるような現象が広がっていけば嬉しい限りですね。
通年採用と年功序列のコンボは最悪
若い頃は賃金が低く、年齢を重ねるごとに給料が高くなる。年功序列と呼ばれるこの賃金制度は高度成長期には海外から「オアシスだ! 天国だ!」と羨ましがられるほど賞賛されていました。
働き盛りの若い頃は低賃金だけど、家族を持ってお金が必要になる頃にはそれなりの賃金が貰えることが確定していたからです。つまり終身雇用を前提に成り立っていたからです。
それが今や時価総額一位を誇るトヨタ自動車も経団連会長も口を揃えて「終身雇用は守れない」という禁句を発しています。
通年採用とは社員をいつでも補充できる方法

上図に示すように現在の雇用では最もお金が必要な時期に道半ばで退職に追い込まれる事態が増えています(図では仮に48歳で退職と仮定)。
高給取りの社員を退職に追い込むことで企業は最も給料を払わねばならない時期をパスできます。
つまり働き盛りの20-30代に安月給でこき使い、身体が老いてきて給料が高くなってきたらリストラで捨てるという運用方法が可能なわけです。
リストラにより浮いたお金で働き盛りの若者を雇って、ガンガン働いて貰えば、少ないお金で最高の企業パフォーマンスを発揮できます。しかも通年採用のためいつでも新卒人員の補充が可能です。
経営者目線で考えると最高の資金運用方法だなと感心します。
通年採用で採れる人材とは
終身雇用が形骸化して年功序列が色濃く残った今の状態では、通年採用にしても企業が採れる人材に何も変化はないと思います。
しかし日本の就活生にとっては不利になる条件が増えることは確かかと。下記に挙げる点が通年採用により懸念される事項です。
- 就活開始がバラバラなため疑心暗鬼に繋がる(初めての就活でスケジュール感を自分で組むのは大きな負担)
- 帰国子女などの海外勢と就活枠を争う闘いが色濃くなる
- 内定を保持したまま他の内定を取ることが難しい(企業間で選考時期異なるため)
- 企業に余裕が出来るため学生の内定獲得が厳しくなる(いつでも採用できるので、本当にいい人材しか取らない)
2020年4月の通年採用施行後も採用方針は変わらない
悲観的なことを書きましたが、企業としても通年採用は初めてでスケジュール感が把握できていません。ゆえに導入から数年はいつも通り3月に就活解禁という流れになることが予想されます。
2020卒の学生は2019卒の就活生が就活する動向をお手本にしながら進めていく形になると思います。
また日本の化学企業はコンサバなので2020年以降も3-4月に就活が本格化する時期は固定されると予測しております。