就活を進めていくと「お、これ面白そうだな」と思うユニークな研究であったり、ビジネスを行っているベンチャー企業に出会うことがあります。
いかにもプロらしくて格好いい仕事紹介資料を揃え、直近の売れ行きの伸びなどを誇らしく紹介されることでしょう。自分もこんな仕事してみたい! と結構な学生が思うのではないでしょうか。
新卒でベンチャー企業に入社するメリット・デメリットを考えてみます。結論としては「朝から深夜までバリバリ働きたい!」という人以外はやめておいた方が無難かなと思います。
ベンチャー企業とは?
実は”ベンチャー企業”という言葉の定義は曖昧です。規模が小さく中小企業にも属していない企業も多いです。一般には”変わった切り口の革新的な技術やアイデアを武器に急成長しようとする企業”のことを呼びます。

https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html
ちなみに中小企業の定義は上表に示した通りです。業種によって定義が異なることを覚えておくと、会社の規模感を推し量る指標になります。
ベンチャーとスタートアップの違い
ベンチャー企業はマーケティングの仕方を工夫したり、小型企業ならではの小回りの良さを生かして大企業になることを目的とする新興企業です。従ってイノベーションを目指すというよりは、安定的して事業を拡大することを重視します。
スタートアップはまさにイノベーションを目指した企業です。世にないものを作り出して新たな価値を創造することで一攫千金を狙います。ある程度商流を持つベンチャー企業と違い、アイデア一発で勝負します。
したがって短期間で花のように散るスタートアップが多いです。
ベンチャー企業は忙しい
ベンチャー企業の新卒採用担当者がしきりに口にする言葉が「やりがい」「責任のある仕事」という言葉です。
就活生目線だとキラキラして面白い仕事が出来そう!と思ってしまう人も多いですが、一歩引いて会社の状況から言葉の意味を考察しましょう。
ベンチャーとは新しいことをやり始めた企業
売上を増やすために新規商流開拓の嵐! 信頼もないため売り込んでもなかなか買ってくれない。
しかし地道な活動をしていると売上が伸びてくるときがあります。すると新しい業務が増えます。既存の人手では足りなくなりますが、ベンチャー企業は運転資金が数百から数千万円ほどのところが多いです。
新卒一人雇うコストって500万円/年くらい。資金繰りとしても新たに雇うのは厳しい。今すぐにでも即戦力が欲しい状態です。ならば教育の手間がかからない中途採用で人員を補充するのがもっとも合理的なはずです。
ベンチャー企業にとっての新卒学生とは
ベンチャー企業は即戦力が欲しいのになぜ新卒を雇うのか。そこには以下のようなカラクリがあります。
- ブラック労働に適応できやすく辞めにくい
- 優秀な人材である可能性が高い
1.新卒は知らぬがゆえに適応能力が高い
新卒は初めて働くので職場の比較基準を持っていません。いわば井の中の蛙です。従って朝から深夜まで働く過酷な状況でも「こういうものか」と勝手に納得して我慢してくれる人が多いです。
就活生にとっても”新卒カード”を使って入った会社です。そう簡単に辞めてしまったら「何のために大学に行ったのか」と過去が否定される。だから辞められない。
2.中途採用では優秀な人が来てくれない
これまで大手企業でバリバリ働いていた人が転職先にベンチャーを選ぶ人はあまりいないと思います。彼らが転職する年齢では家族という守るべき存在が出来るため、仕事はどうしても安定した給与を求めざるを得ません。
またベンチャー企業は知名度がないので単純に優秀な人が応募してこないのも理由の一つです。
30代や40代の能力の高い人材は社会経験が長い分、様々な会社を目にしています。当然ながら会社の善悪を容易に嗅ぎ分けます。ダメな会社だと思ったらすぐに辞めてしまう人も多いです。
新卒でベンチャーに入るデメリット
社会人の基礎を教えてくれない
しっかりした企業では新卒入社後に名刺交換、商談、マナー・礼儀・メール文章の書き方・議事録の作成方法などを教えてくれます。仕事でカツカツになっているわけでないため、上司も部下にモノを教える余裕があるのです。
しかしベンチャーでは猫の手も借りたい状態で仕事をしています。新卒で入ったその日に仕事を振られて、「いつまでにやってね」で終わりの環境です。新人に構っている暇などありません。
「見てやり方を盗むんだ」とかいう人がいますが、新卒は右も左もわからない状態で振られた仕事にいっぱいいっぱいです。とても人のことなんて見てる暇はないです。結果的にビジネスの基礎のないまま取引先との会議に挑み、印象が悪くなるなどの弊害もあります。
当たり前の事柄がままならない
残業を付ける・休日にしっかり休む――そんな権利がままなりません。
アルバイトでは拘束時間に対してある程度キッチリと給与が付いていたと思います。大学の休みは土日休みで夏や冬には大型連休もありました。学生時代ならば当たり前だと考えていたことですが、ベンチャー企業ではかなりの確率でそれが幻想だと気づきます。
しっかりとした勤務体制が整っているベンチャーも存在するので一概にはいえません。そればかりは経営者の思想に掛かっていますが、働いている人材は休日なんて厭わず出社するような鉄人ばかりです。
その証左としてITベンチャーに入った友人から聞いた話をいかに列挙します。なかなか刺激的な内容なので聞いていて「おお……」と思いました。
- 休みなしで10連勤
- 会社に寝泊まりする
- 残業は付けられない
- 狭いので荷物はケース一つまでしか持ち込めない
特に給与面において「みなし残業」には注意してください。〇時間分の残業がすでに組み込まれているという給与体系の場合、いくら残業しても残業代は変わりません。
労働組合がないため待遇交渉が困難
労働待遇改善を要求する際に利用できる組合はベンチャーには存在していません。直接的に社長へ改善を訴えることも出来ますが、軽く流されて泣き寝入りしてしまうことが殆どでしょう。
独立した外部のユニオンに加入して団結権を行使することも出来ますが、会社にたてついた時点で働き続けることは難しくなるでしょう。待遇の改善は非常に困難を極めてしまいます。
新卒でベンチャー企業に入るメリット
悪いことをお伝えした後はベンチャーで経験できる良いことを記します。
大企業では出来ない仕事の進め方が出来る
大企業ですと事業を一つ立ち上げるにも上司と上位上司、取締役などにまで書類をお目通り頂かねばなりません。筆者は決断をだらだら先延ばしにするこの愚かな行為をスタンプラリーと呼んでいます。
それも纏まった額の投資となれば、上の人間にプレゼンなどで説明する必要が出てきます。説明資料や書類作成によって「社内向け」の無駄な労力が一つの判断を行う度に発生するわけです。
これが大企業が素早く動けない理由ですね。その点、ベンチャー企業は各担当者が大きな裁量を持っているため、自分が思ったように物事を動かすことができます。
ベンチャーでは責任は大きくなるものの「自分で仕事を転がしている」という感覚は経営者目線に近い立ち回りのため楽しいと思います。実際、大企業で海外子会社の社長を担当した方は日本に戻ってきて部長などになっても、思ったように物事を動かせないため退職してしまう人も多いようです。
ベンチャーで働ければどこでも通用する
厳しい環境で働くメリットとしては転職先で働くことがラクになることです。メチャメチャ忙しい環境の中では、エクセルマクロ・RPAなどの導入によって最大限効率化することが必要になるため、その知識も自然と身に尽きます。
効率のいい仕事のやり方を心得ているため即戦力として活躍も出来るでしょう。仕事スキルをブラッシュアップするにはベンチャーは良い企業です。
バリバリ働きたい方は、新卒で普通の企業に入って教養やスキルを身に着けて会社を数年で退職し、中途採用でベンチャー企業に入社するというのが良い道かとは思います。
ストックオプションで一攫千金出来る
一番夢があるお金の話です。
ベンチャー企業の黎明期(社員数人というスタート時期)に入社をするとストックオプションを貰えることが多いです。
自社株式を安い価格(1円とか)で購入するための権利のことです。
ベンチャー企業の立ち上げ黎明期にはその株式には殆ど価値がありません。しかし次第に事業が拡大していくと株式に価値が生まれます。
創業者に近い立場ならば多くの自社株を持てるため、上手く上場までもっていければ容易に100倍になったりするわけです。
晴れて事業が成功して新規公開株として上場するとなれば、社員が持っているストックオプションは大金に化けます。
具体的にはおよそ500万~1億円程度でしょうか。平均的に数千万円にはなると思うので夢がありますね。ストックオプションは立ち上がり直後のスタートアップ企業に参画することが付与を貰う狙い目です。
自分で育てた会社の規模が大きくなって、自分の懐に帰ってくる。これほど働きがいがある仕事はありませんね。
ベンチャー企業についてのまとめ
- ベンチャー企業は良くも悪くも忙しい
- 仕事に対する基礎がない新卒学生はやめておくべき
- 事業が上手くいければ大金を入手できる可能性アリ
- 修行の場として中途採用で挑戦してみるのがオススメ