知らねば損! 株式会社クレハをIRで企業研究

本稿では株式会社クレハの有価証券報告書を紐解いて会社分析をしていきたいと思います。経営状態や組織図をざっと俯瞰し、自分が本当に目指したい会社なのかの検討に役立てて頂ければ幸いです。

クレハの基礎IR情報

  回次  第104期第105期第106期
決算年月 2017年3月2018年3月2019年3月
売上収益(百万円)132,294147,329148,265
税引前利益(百万円)8,98112,68317,435
純利益(百万円)7,0019,69713,933
自己資本比率(%)55.867.268.8
自己資本利益率(%)3.25.610.3
営業活動によるCF(百万円)12,35020,17823,377
投資活動によるCF(百万円)△1,071△9,698△8,363
財務活動によるCF(百万円)△11,727△10,415△15,478
フリーCF(百万円)112791048015014

株式会社クレハについて、2019年は売上高1483億円に対して経常利益174億円。経常利益率11.7%。化学企業での全体平均がここ五年間は6-8%程度(財務省発行 年次別法人企業統計調査 より)なため、経常利益は高いです。

クレハは業績がうなぎ上りで好調

2016年や2017年は凹んでいましたが、2018年からは利益を上げてきていますね。今年に入って経常利益率が10%を突破しました。自己資本利益率ROEも10%台に乗せてきており、盛り上がってきています。

フリーCFは5年連続プラスで流動比率も1.3倍あります。自己資本比率も60%台なので健全な財務といえるでしょう。

減価償却費の計上により営業活動によるCFが利益より多くなった

営業活動によるCFは、会社の本業によって得た利益のことを指します。しかしクレハの場合はいずれの年においても税引前利益よりも営業活動によるCFが大幅に増加しています。

これは副業で儲けたとかではなく、固定資産の減価償却費がプラスになっているからです。要は製品を作るための設備投資金額を回収しきったので、毎年利益に償却するはずだった分の費用を還元しているということです。

2020年3月までに50億円分の自社株を購入

目的は「株主還元策の強化と資本効率の向上」のため。ちなみに本決定を下した2019年5月は年初来安値に近い値段を付けたときでした。大株主から何か言われたのかもしれません。

2019年業績では利益額自体も前年度より1.5倍に回復しましたし、実施した自社株買いとのW相乗効果によってROEは一気に10.3%になりました。

ROEは投資家が会社の価値を推し量るときに好んで使われます。基本的に業界によって水準が全くことなるため、同業種内で比較すべきものです。

株高による株主還元 : 需要が増えるので株価が高騰する
資本効率の強化   : 会計上の株主資本が減少するので自己資本利益率が向上する
銀行から借入を行うというネガティブな方法でもROEを高めることができます。盲目的にROEだけで会社の価値が判断されるわけではありません。

直近の事業成績

回次 第106期第107期
会計期間 自  2018年4月1日自  2019年4月1日
  至  2018年12月31日至  2019年12月31日
売上収益(百万円)110,811105,436
税引前利益(百万円)14,19325,868
純利益(百万円)11,11220,720
営業活動による(百万円)16,0896,651
投資活動による(百万円)△8,0948,035
財務活動による(百万円)△6,743△10,939

純利益が前年度の倍くらいに上昇していますね。一見すると2019年4月~12月でとても利益が出ているかと思いきや、営業活動によるCFは前年度より酷いことになっています。

この理由は純利益に固定資産の売却益(約11000)と棚卸資産の増加(約5000)が含まれているからです。したがって2019年は本業での利益はさほど出ていません

株式会社クレハは樹脂化学事業をメインとするが、建築や医薬品関連にも根を伸ばしている化学企業です。ここから売上高を伴う事業拡大をしていってほしいところです。

クレハという社名の由来

2005年に呉羽化学工業という名前を縮めて「クレハ」と名称変更しました。前身である呉羽化学工業は呉羽紡績から分社されて誕生しました。その呉羽紡績は富山県の呉羽町にあったから付いた名前です。

クレハの注目ニュース

海洋プラスチックごみの削減用途にクレダックスが注目を集めている

2019年に大阪で行われたG20で海洋プラスチックごみに焦点があたった。これらは微生物が分解できず海洋で永遠に漂うことになっているため、生分解性のあるポリグルタミン酸を利用しているクレダックスが注目されている。

クレダックスはクレハの独自技術で世界初の大量量産を可能にした製品であり、もともとはシェールオイル採掘用途に開発。しかし今後は容器包装などでも大きな需要が出てくる可能性が高い。

 

原子状酸素を当てて作り出した凸凹が抗菌性能を発言することを発見

クレハとJAXAの共同研究による研究結果が2020年2月14日にニュースになりました。元々は宇宙船の表面装甲が宇宙空間の原子状酸素に削られて強度が下がる問題を解決するために研究していたら、偶然にも発見された効果です。

凸凹があるだけで抗菌作用があるらしく、上手く食品梱包材などにこの表面処理を施せれば食品の長持ちなどの効果が期待できるかもしれませんね。

 

NEWクレラップ クレハカット選手権 が開催された

ひたすらラップを食器にかけるというアホなユニークな大会が開かれたのは巷で少しだけ話題になりました。優勝者には金の延べ棒(100万円相当)が手渡されるとあって、参加者は全員が真剣に取り組んでいたようです。

クレラップの使いやすさ、切りやすさを世間にアピールしてますね。狙いは会社の宣伝でしょうか。あと個人用ラップ市場は渡さねえぞ! というアピールかもしれません。

個人用ラップ市場の規模は500億円もあります。ちなみに全体の8割をクレハと旭化成で占めているみたいです。

残りの2割はポリラップとか日立ラップとかでしょうか。

クレハの事業分野一覧

前期売上高(百万円)営業利益(百万円)営業利益率(%)従業員数(人)事業内容
機能製品事業41,6401,6694.0849PGA(ポリグリコール酸)樹脂加工品など
化学製品事業26,1763,42113.1336医薬品、農薬、工業薬品
樹脂製品事業45,3976,90715.21,169家庭用品、食品包装材
建設関連事業17,3541,0376.0261建設、エンジニアリング
その他関連事業16,7601,81210.81,123環境関連事業や物流

機能製品事業は原料の販売がメイン

機能製品事業というと独自の機能特性を持つ製品かと思いますが、それにしては営業利益率が4%ととても低いことに疑問を抱きます。

実はこの分野で扱っている製品はシートとかテープとか機能を持った製品ではなく、加工用の原料なんです。話題のクレダックスも同じくPGAのペレットとして販売しています。

主要事業の動向

機能製品事業

リチウムイオン二次電池用バインダ-向けのフッ化ビニリデン樹脂、およびシェ-ルオイル・ガス掘削用途向けのPGA(ポリグリコ-ル酸)樹脂加工品の売上げが増加。

炭素製品分野:高温炉用断熱材向けの炭素繊維の売上げが増加

化学製品事業

医薬品分野:慢性腎不全用剤「クレメジン」の医薬品の売上げが増加したが、農業・園芸用殺菌剤の売上減少。

工業薬品分野:無機薬品類の売上げが増加し、この分野での売上げ、営業利益はともに増加しました。

樹脂製品事業

コンシューマー・グッズ分野:家庭用ラップ「NEWクレラップ」およびフッ化ビニリデン釣糸「シーガー」の売上げが増加。

業務用食品包装材分野:熱収縮多層フィルム等の売上げが減少

建設関連事業

建設事業:土木工事は堅調であったものの建築工事が減少。

クレハの就活情報

学歴ボーダーライン

理系の国公立大学院生以上なら可能性がある。上位国立以上だとなにも心配せず全力で戦える印象である。

選考フロー詳細(知人内定者体験談)

ES提出 ⇒ 適正検査受験 ⇒ 社員面談・座談会(筆者脱落)⇒ 
技術面談(研究プレゼン) ⇒ 最終面接  ⇒ 内々定

さて社員座談会で筆者は落とされましたが、ここを超えて技術面談までいけば6割くらいの確率で最終面接にたどり着けます。この社員座談会で連絡が途絶えてしまう人が多かった印象があり、サイレントお祈りを利用されたと思います。

特にここ最近の採用人数をみると絞っている傾向がみられます。その分倍率も上昇するので応募する際には注意が必要です。

重要な沿革

1944年 6月呉羽化学工業株式会社(現・株式会社クレハ)設立
1949年 4月菊多運輸株式会社(現・クレハ運輸株式会社)設立(現・連結子会社)
       5月東京証券取引所に株式上場
1960年 7月家庭用ラップ「クレラップ」販売開始
2003年 1月塩化ビニル樹脂事業、プラスチック添加剤事業の営業権を譲渡
2005年10月商号を「株式会社クレハ」に変更、本店(本社)を中央区日本橋浜町に移転
2018年 3月「クレスチン」(抗悪性腫瘍剤)の販売を終了

このクレスチンは発売当初はガンに効果があると持て囃されましたが、もう一度審査をするとガン治療効果の有意性が認められず、「うん、効くかもね」という位置に格下げになったので販売量は激減しました。

これはカワラタケというキノコから抽出された成分の一部を薬に配合したものです。当時の治験はずいぶんと適当で、有意性がなくとも運ゲーでたまたま効果ありになったらしいです。

真剣に生きているがん患者からすれば許せないですね

平均勤続年数

決算年月日2015年2016年2017年2018年2019年
従業員数(単独)1,769人1,812人1,877人1,835人1,808人
平均年齢(単独)42.4歳42.8歳42.9歳42.9歳43.2歳
平均勤続年数(単独)17.7年18.6年18.7年18.9年19.3年

平均勤続年数が5年間で17.7⇒19.3と約1.6年も伸びています。平均年齢も1.2歳上昇していることから退職前の団塊世代がごっそりと上層部にいるような雰囲気を受けます。

従業員数もほとんど変わっていないことから、新卒の採用を絞って退職間近の団塊世代の給与をクレハが頑張って支払っている状態に見えてしまいます。

あと売上にしては従業員数は少し多めです。勤続年数が19.3年と業界では長めの水準です。平均給与は業界では中の下といったところ。化学メーカーとしても少し低めの給与水準でしょう。

平均年間給与は参考程度に

平均給与額の算出方法がこれといって定められていないため、各社によって”どの職責までを平均に組み入れるのか”という基準が違います。

不当に低く見せたり、不当に高く見せたり自由自在です。

特にメーカーは社員の給与が高すぎると、それをダシにして取引先からもっと製品を安く売れとか恐喝されるので各社低めに算出する傾向があります

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