本稿では三菱瓦斯化学株式会社のIRを紐解いていきます。経営状態や組織図をざっと俯瞰し、採用面接や企業選びに役立てて頂ければ幸いです。
三菱瓦斯化学の基礎IR情報
回次 | 第91期 | 第92期 | 第93期 | |
決算年月 | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 | |
売上高 | (百万円) | 635,909 | 648,986 | 613,344 |
経常利益 | (百万円) | 80,711 | 69,199 | 31,116 |
当期純利益 | (百万円) | 60,531 | 55,000 | 21,158 |
純資産額 | (百万円) | 519,144 | 553,282 | 548,141 |
自己資本比率 | (%) | 59.48 | 62.55 | 63.82 |
自己資本利益率 | (%) | 13.57 | 11.34 | 4.25 |
株価収益率 | (倍) | 9.06 | 6.13 | 11.7 |
営業活動によるCF | (百万円) | 90,720 | 64,042 | 74,234 |
投資活動によるCF | (百万円) | △33,614 | △42,761 | △33,922 |
財務活動によるCF | (百万円) | △33,038 | △31,396 | △49,563 |
現金の期末残高 | (百万円) | 90,304 | 80,379 | 70,043 |
従業員数 | (人) | 8,009 | 8,276 | 8,954 |
2016~2020年度までの五期分の業績推移では売上高も経常利益も変化していません。売上高6000億円規模の巨大企業なため成長は頭打ちになっています。
しかし経常利益も常に8-12%程度で安定していて営業CFもプラスのため、就職して働くには安定した良い企業かと思います。
2020年3月から日本でも本格化したコロナ禍もあり20年度の経常利益が半減しています。
最新の21年度1Q決算では半導体向け製品は堅調な売れ行きだったものの、自動車関連製品を中心に軟調で売上高と経常利益ともに約10%減少しています。
頼みの綱の日本・サウジアラビアメタノール株式会社が行うメタノール事業も、サウジアラビアの国策に巻き込まれて株式持ち分を50%⇒25%へと引き下げを余儀なくされました。おかげで持分法で享受できていた莫大な利益が半減することになります。
世界第2位のメタノール(基礎化学品)の供給事業者である三菱ガス化学が、中東最大の資源国サウジアラビアで難しい局面を迎えて…
余談ですが、筆者が説明会を聞きにいくとメタノール収益で増強される「経常利益」をアピールされた覚えがあります。配当収入や持分法が低下した現在でも同様の主張があるかは気になるところです。
投資家視点での分析
最新の1QではROE4.3%と低下しており、自社株買いや配当増強などで株価対策をしてほしいところです。PBRは0.8倍のため割安感がありそうに思いますが、成長性がないので機関投資家には好まれないかなと。配当利回りは3.5%ありますが、利益が悪化しているため減配の可能性が高そうです。
財務面では流動比率2.2倍であって自己資本比率も64%と理想的な位置にいますので、経営難になる可能性は殆どないと思います。よくも悪くも長期で配当目的で持つには最適という化学メーカー系銘柄ですね。
三菱瓦斯化学ってこんな会社!
天然ガスや石油を精製して誘導体や溶剤単体など原料販売、およびそれらを加工して特殊な機能を付与した機能性材料を販売している会社。売上は機能性材料が約3割、原料系が7割という比率なので東ソーに似た割合といえます。
やはり利益が乗るのは機能性材料です。機能化学品が営業利益全体の半分を稼ぎ出しています。
企業の特色としては、サウジアラビアの合弁会社からのメタノール収益が経常利益として乗っかるため利益が底上げされていること。
また我々消費者の間で有名な製品といえば脱酸素剤であるエージレスです。パンなどの包装によく利用されています。
食品用エージレスはただの鉄粉ではない!

エージレスといえば鉄粉が酸化鉄に代わる際に酸素を吸収する性質を利用した脱酸素剤だと思っていました。しかし実際は脱臭も兼ねて活性炭も併用していて、かつ酸素を吸いやすい特殊な加工を行っているらしいです。食品・医療分野ではシェアNo1です。
三菱ガス化学という社名の由来
前身である三菱江戸川化学と日本瓦斯化学工業に由来します。二つ繋げて三菱瓦斯化学です。
ちなみに三菱江戸川化学は1918年に三菱製紙の出資によって設立されたため、三菱の名を冠するようです。今でも三菱グループの会社ですが、三菱ケミカルとは関係ありません。
注目した三菱瓦斯化学のニュース
日本ユピカのTOBによる子会社化【2020年3月】
元々不飽和ポリエステル樹脂事業を統合するために三菱瓦斯化学60%、東洋紡40%をそれぞれ出資して設置した会社です。2004年からジャスダックに上場しています。
本TOBでは株価1680円に対してプレミアム85%を載せた3000円にて実施していました。これにより三菱瓦斯化学の日本ユピカ保有株式は38%⇒60%となって関連会社から子会社への昇格を果たしました。
市場から浮動株がなくなって三菱瓦斯化学と東洋紡だけが株主となりました。
台中市で過酸化水素の製造設備を新設【2020年2月】
約170億円を投資して台湾の既存工場で過酸化水素の製造設備を導入します。超純過水の一貫生産体制を敷くために必要な過酸化水素を現調化するためです。2023年からの稼働を見込んでいます。供給能力が余った場合には他社へ販売することも考えている模様です。
過酸化水素は超純化水の需要の高まりで現地生産の方がコストが安く済むと判断したようです。輸送コストも削減できますし、原料自体も物価の安い台湾で調達した方が安いと思います。
超純化水は半導体需要の拡大を商機と捉えたみたい。すでに三菱瓦斯化学は超純化水の供給でも世界トップに立っているため、これを死守する狙いもある模様。
タイでプリプレグの製造設備を新設【2020年4月】
タイにある子会社MGCエレクトロテクノがデジタル家電や自動車の電装用基板に使われる「プリプレグ(樹脂含浸繊維シート)」や「銅張積層板」と呼ばれる素材を生産しています。プリプレグの製造装置を追加で導入して2022年4月に営業運転を開始する予定です。MGCエレクトロテクノは半導体パッケージのビスマレイミドトリアジン積層材料のセカイへの供給を行っています。
三菱瓦斯化学への就活情報
財務は問題なくおススメの就活先
営業活動で常に10%ほどの経常利益を上げており、フリーCFも常にプラスと収益基盤は盤石です。メタノール収入が低下するとはいえ、本業が赤字というわけでもないので就職先としてはオススメできるかと思います。
学歴ボーダーライン
技術系総合職は地方国立大学院生以上なら狙える。旧帝大のメンツが内定者の半数もいないので気張らずとも大丈夫です。メイン層は地方大学院生以上。
営業などの文系総合職は採用数が少ないため、どこの化学メーカーも100倍並みになります。英語ペラペラで人当たりが良い人が多いです。
選考フローと面接内容
履歴書・ES提出 ⇒ ウェブ適性試験 ⇒ 一次面接 ⇒ 二次面接 ⇒ 最終面接 ⇒ 内々定
三菱瓦斯化学はa4で一ページを自由に記述するESが鬼門です。なんせ働きたい理由を理論的に並べて主張する必要があります。このESで多くの志願者が落ちます。
次の一次面接は60分で2対1の面接になります。お決まりの質問をされて、コーヒーを囲みながら本音でお話を行います。一人につき60分かけるってすごいよね。
この一次面接に合格すると最終面接となります。しかし、殆どは意思確認レベルであって全員が通過するようです。
平均年齢・勤続年数
決算年月日 | 2016年3月31日 | 2017年3月31日 | 2018年3月31日 | 2019年3月31日 | 2020年3月31日 |
平均年齢(単独) | 40.1歳 | 40.3歳 | 40.1歳 | 40.2歳 | 40.6歳 |
平均勤続年数(単独) | 17.1年 | 17.1年 | 17.5年 | 17.5年 | 17.6年 |
平均年収(単独) | 759万円 | 827万円 | 837万円 | 863万円 | 878万円 |
平均年齢は40歳で平均勤続年数17年と普通ですね。
平均年収は高めに出ていますが、日本の大手化学メーカーなら待遇はどんぐりの背比べです。平均年収は集計する対象をどこまでの範囲にするかで容易に数字を弄ることが出来ます。あくまで参考程度に見ておきましょう。