有機化学系研究室が多忙を極める理由

ここでは筆者がいた有機化学系の研究室の全貌について書いていきます。包み隠さず真実を記載しているので有機系に進むかどうかの判断の参考になれば幸いです。

有機化学系研究室の活動とは

大学の研究ではまだ世にない技術や知識の獲得を目指して全く新しいことにチャレンジすることが特徴です。つまり0から1を作り出す基礎研究であり、掛かった費用や費用対効果などは全て目を瞑って研究を進めます。一応の理想目標はありますが、実務ベースでは何に利用可能かだって殆ど気にしません。

もちろん実用に近い分野の研究ならば研究成果物が実際に発売されたり、企業に利用されることもあります。しかし大半の研究は基礎研究であるため、残念ながら在籍中に製品化などの日の目を見ることはないと思います。

有機化学系研究室の一日

筆者がB4、M2時代に過ごしていた有機化学系研究室における生活の一日のモデルを以下に示します。

学部4年生でも9時出社18時半以降帰りです。院生となって卒業を控えたM2まで来ると21時帰りがデフォルトになってきます。一日の総研究時間は10-12時間といったところです。

有機化学系研究室の一日の概要

筆者はこの間に有機化合物の合成・有機化合物の物性測定・文献を読む・研究報告会準備などを行っていました。一つのタスクに数時間掛かることが多いですので、一日でいくつものタスクをこなすのは難しいです。

拘束時間は長いですが、昼飯にいつ行ってもいいですし時間の使い方は結構自由が利きます。帰りが遅い人だと毎日同期と晩飯に行ってから戻ってきて研究して帰るような人もいました。

有機化学系研究室は学部時代より大幅に忙しい

化学専攻の大学生は三年生まででも講義の勉強や実験レポートなどで忙しかったと思います。そして残念ながら研究室に入ってからはもっと忙しくなります。

下記は大学生の各学年における忙しさの度合いを大学院2年生を100として筆者が独断と偏見で数値化したものです。研究室に入る大学4年生から数値が急激に上昇しています。

大学院2年生を100とした際の各学年における忙しさのイメージ

有機化学系研究室の全学年に共通するタスク

  • 論文・雑誌を読むことによる知識獲得
  • 研究対象を分析することによるデータ獲得
  • 研究室内向け論文紹介や研究報告の資料作り
  • 学会へ向けた資料作り

大学4年生に特別に発生するタスク

  • 研究室内イベントの準備・実施
  • 院試 または 就活(インターン・ES添削)の準備
  • 卒業論文作成

大学院1年生に特別に発生するタスク

  • 新大学4年生の面倒を見る
  • 就活の準備 (インターン・ES添削)
  • ティーチングアシスタントとして学部学生実験などの手伝い
  • 研究成果の学会発表へ向けた資料作り

大学院2年生に特別に発生するタスク

  • 就職活動(就職する場合)
  • 研究成果の学会発表へ向けた資料作り
  • 修士論文作成

就職活動は速い人だと5月中には終わりますが、人によっては上手く運ばず夏休みごろまで掛かります。少なくとも3月と4月は研究より重点を置くことになります。

論文作成は2-3か月は執筆に必要なため、2月の提出に向けて12月からコンスタントに書き始めるようなイメージです。こちらについても詳しい内容は別の記事に纏めております。

有機化学系研究室が忙しくなる理由

学部時代もテスト勉強やレポート課題提出などの忙しい事項が沢山あったと思います。研究生もタスクがいっぱいあるのは分かりますが、なぜ10-12時間も在籍するほど忙しくなってしまうのかを筆者なりに考察しました。

1、研究には答えがないから

これが最も正鵠を射た表現です。学部時代のテストやレポートもある程度の”正解”があったはずです。だからこそ皆さんのパフォーマンスを目に見える数値として一律にGPというグレードで評価することが出来ました。

しかし研究は手探りで「答えっぽいモノ」を探す大冒険です。芸術に似ていて”どこが終わりか”が全く分かりません。突き詰めればキリがないので無限に時間を費やせます。

2、新たなタスクが際限なく降ってくるから

例えばある化学物質の測定をしていて、発表が出来る結果を出すところまで辿り着いたとします。一安心した貴方が教授に結果を持っていくと言われます。

教授「これはいい結果だね。じゃあ発表まであと数日あるから、この結果を使ってこういう現象を起こせないか検証してみよう」

私はこれが研究室のダメなところだと思っています。

研究室の研究では良い結果を持って行っても満足せず、それを残り少ない時間でさらに良い結果に仕立てようという教授の意思が働きます。その結果、深夜まで残ったり、休日に研究室に来て研究結果を纏めることを強要されるのです。

院生になるとそうならぬよう敢えて期限ギリギリに結果が出たという体で発表資料を作ったりしました。時間を忘れて研究に没頭できるほど熱心ではなかった筆者はそうして自分の時間を守っていました。

有機化学系研究室を目指す方へ

これまで述べたように化学系学生はめっちゃ忙しいです。研究する経験は新たな機械や人との出会いに溢れていることは確かです。人前での学会発表経験も自分で研究計画を練る経験もメンタルの醸成に大きな意味を持ちます

これから上手くタスクが増大しないように教授と勝負しながら管理を行い、無理のない研究生活を送るのが大切です。

辛くなったら研究室を休んででもメンタルを維持していく。上手く研究と自分の時間に折り合いをつけながら向き合っていくことが大事だと筆者は考えています。

以下の記事で理系化学系院生の日常について問題提起しているので、進学を迷っていたり、どんな環境か知りたい方はご覧ください。

関連記事

かわいい子には旅をさせろといわれるほど、若いうちに苦労をする経験は大切です。人間は様々な場所を巡って、そこでしか得られない経験をすることで一つひとつ対処方法を学んでいきます。 この事実は一度遭遇した敵の情報を覚えて、予め対抗物質を用[…]

大学院生の時期による忙しさの変化
就活豆知識をチェック!