サイレントお祈りに対抗するには

ここ数年でツイッター上に何度かサイレントお祈りについて議論している様子を見たことがあるため記事にします。サイレントお祈りは就活をしていると必ず出会います。

相手には礼儀や時間を要求するわりに、企業自身が学生に対して失礼な態度を取るのは就活生としても心中穏やかではありません。しかし人事採用担当の立場を考えると、そう単純に批判ばかりできないのも現実です。

本稿ではサイレントお祈りが横行してしまう原因と対策について記述していきます。正しい知識を持っていれば、あなたの就活に与える影響は殆どないです。

サイレントお祈りとは

サイレントお祈りとは採用選考で企業に応募してきた学生に対し、不合格通知をよこさないことです。

不合格になった際に送信される電子メールが「貴殿の益々のご活躍をお祈り申し上げます」という句で結ばれることから、不合格通知をお祈りメールと呼んだのが始まりです。

不合格通知が永遠に送信されてこないのでサイレントお祈りと呼ばれています。

サイレントお祈りに対抗する方法

対抗策は合否結果の通知方法を聞いておくことです

最終面接終わりに「いつ頃に結果が頂けますか?」と聞いてみましょう。通知時期を越えても連絡がなければ100%落ちたと考えましょう。

多くの企業に応募することも大切

もう一つの対策法は、多くの企業に応募して選択肢を増やしておくことです。

極論ですが最終面接を控えた企業がいっぱいあれば、一度の合否で精神を左右されません。常に25社程度の面接待ちの持ち駒を残しつつ就活を進めることが肝心です。

巨大企業ほどサイレントお祈りが多い

困ったことにコンプライアンスを率先して順守すべき大企業が、もっともサイレントお祈りを連発しています。

サイレントお祈りを行う企業は大企業(従業員数1000人以上)全体で25%にも上ります。筆者が就活した体感では従業員5000人を超えるような超巨大企業では全体の30%以上がサイレントお祈りでした。

さて中小企業でサイレントお祈りが少ない理由は単純明快です。

大手指向する学生たちの影響でエントリーが少ないため、ESを送ってくれた学生一人ひとりに対して手厚くケアするからです。目標採用数も1人とか2人とかなのでマンツーマンでフォローできます。

逆に巨大企業ほどサイレントお祈りが多い理由は、採用数が多いためです。

巨大企業が連発する理由

巨大企業は中小企業と違い、採用数が100人単位になることも珍しくありません。採用数を充足させるために事前に決めた採用計画に従って面接を行っていきます。

数百人規模ともなると内定者各自にフォロー担当者を付けるのは到底不可能です。しかしそんな状態でも計画通りに採用を進めなければ、新卒採用担当者の評価が下がってしまいます

そこで人事は内定者に辞退されたときのために第二陣、第三陣の内定者予備群を持っておく必要があります

そんな状況でお祈りメールを送信してしまうと予備群としてキープできなくなってしまいます。

なので永遠に送らないことで永遠にキープしているのです。

採用での辞退者数が安定しない

さて保険会社は事故が起こる確率から期待値を計算することで毎月の保険金を算出しています。保険金を計算できるのは、毎年ごとに蓄積されたデータから、どの事故がどれだけ起きるかを予想しているからです。

では企業も”全体の〇%が内定を辞退する”というデータを利用して内定予備群の数を調整できるはずです。

そういったデータを使って採用計画を組んでいるようですが、人事採用はもろに景気という見えない存在の影響を受けます。

実際に就職氷河期などといわれている世代では、企業は採用枠を現在の数分の一に絞っていました。また学生側も不景気なのを知っているので中小企業中心の考え方にシフトしており、ES提出先の分布も景気によって左右されるといえます。

このように企業の採用数も新卒学生の趣向も景気によって大きく変わるため、過去データを参照しても正確な内定辞退者数を割り出すのが難しいです。

だから採用数の多い大企業ほど安全のために多くの内定予備軍を持とうとし、サイレントお祈りが多発してしまうのです。

人事採用が忙しくて手が回らない

ただ単に、「忙しすぎて手が回らない」というのもサイレントお祈りが発生する一つの理由かと思います。

人事採用が注力するのは内定者のフォローや内定者の確保であり、選考から外れた人たちの対応の業務優先順位は最低にあります。別記事に取り上げたように2020から通年採用が開始されるため、通年枠への対応も迫られてきます。

とくに就活が活発化する3~6月は来年の夏インターンの設定、中途入社者へのフォローなども加わって滅茶苦茶忙しい時期です。しかも大企業ではそれぞれのイベントの参加人数も大規模なため、イベント用の会議室を外部で用意したりする必要があり手間がかかります。

内定辞退者対策用に補欠採用のための人員が欲しい

・採用数が多いため内定者フォローが行き届かないため

・採用選考の時期は忙しいのでお祈りメールを送信し忘れる

最終面接後は2週間以内に連絡が来る

面接時に結果の通知方法については説明されるのが一般的です。「通過した場合は〇週間以内に連絡をします」などと言われると思います。そうでなければ面接終わりに自分から聞けばよいでしょう。

ただし”採用したい”と思う学生については結果の通知方法を言います。落とすつもりの学生には言い忘れることもあるようです(必要ないから)

基本的には1週間音沙汰なければ落ちたと確信していいです

とくに最終前の面接などは面接終了後数時間で電話が来たり、1日後に来たりすることもあります。

ES提出後は数か月後に連絡が来る場合もアリ

サイレントお祈りが最も多いパターンが”ESは出したが何の返信もない”というパターンです。この場合は「ES提出から1カ月経っても音沙汰なければ99%落ちている」と考えて問題ありません。

まれに保留になっていて2か月後に面接日程のお便りなどが来ますが、その場合は殆ど採用枠が埋まっているので期待薄です。

100%の確率で内定予備群なので面接しても徒労に終わることが多いでしょう。

学生と企業は対等な力関係を持っている

冒頭で「学生だけにマナーを求めるのは心中穏やかでない」と記述しましたが、筆者は企業が学生だけにマナーを求めているとは欠片も思っていません。

もちろんサイレントお祈りという行為は許されるべきものではない失礼な行為なのは確かですが。

実は就活採用って、採用される側の方が持っている権利が強いのです。それを以下に挙げてみます。

  • 好きな応募企業を選ぶ権利
  • 企業の内定を辞退する権利
  • 内定を企業から破棄させない権利

企業は学生の応募を待つことしか出来ません。応募の中で良さげな人に内定を出したとしても、学生の気まぐれで簡単に辞退されてしまいます。

逆に企業側は内定を一度出した学生に対して、「やっぱ、やーめた」と取り消すことはできません。

2009年の職業安定法改正により、内定破棄を行った企業は社会に晒されることが確定しました。内定取り消しを行うことは著しくブランドイメージを損なうため、よほどの事件でもなければ出来ません

こうしてみると企業側はかなり不利な立場に立たされています。

本稿で取り上げたサイレントお祈りも、不利な状態を少しでも打開するための苦肉の策と呼べるでしょう。

企業はサイレントお祈りや推薦状(内定を辞退できなくなる)という武器を駆使して、やっと対等な関係に落ち着いている状態です。

だからサイレントお祈りだけを取り上げて非難するのも、なんだかなあと筆者は感じています。もちろんマナーとしていけないことなのですが。

・面接の場合 :面接後2週間以内で連絡が来るか

・ES提出の場合:提出後1カ月以内に連絡が来るか

サイレントお祈りは好景気で増加する

好景気が続くほど売り手市場になり、学生が入社先の選択肢を多く持つようになります。その分だけ内定辞退も増えていくので、サイレントお祈りの有用性も強力になっていきます。

好景気が継続する限り、サイレントお祈りを実施する大企業は増え続けると予測します。これは仕方がないことです。

企業も採用計画を満足させるために必死ですし、学生も希望の企業に入社するために必死です。

もし法律が改正されて、企業から一方的に内定破棄できるようになればサイレントお祈りはなくなるでしょう。ただそうなると学生の立場がとても弱くなるので最悪です。

サイレントお祈りがあるからこそ就活生が内定破棄に怯えずにのびのびと就活できる、そう考えれば精神安定上もよいと思います。

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