知らねば損! 昭和電工株式会社をIRで企業研究

本稿では日産化学株式会社の有価証券報告書を紐解いて会社分析をしていきます。経営状態や組織図をざっと俯瞰し、自分が本当に目指したい会社なのかの検討に役立てて頂ければ幸いです。

昭和電工の基礎IR情報

2019年度は売上高9064億円に対して営業利益1193億円。経常利益率15%です。

化学企業での全体平均がここ五年間は6-8%程度(財務省発行 年次別法人企業統計調査 より)なため凄く経常利益が高いです。

しかし、これ実は溶融炉用の黒鉛電極が一時的に爆売れした結果なんです。その証拠に2019年では特需が落ち着き始めて営業利益が低下しているのが分かります。

普段の昭和電工は2017年のように7-8%程度の利益率です。

回次第109期第110期第111期
決算年月2017年12月2018年12月2019年12月
売上高(百万円)780,387992,136906,454
経常利益(百万円)63,851178,804119,293
当期純利益(百万円)37,404111,50373,088
自己資本比率(%)34.341.546.4
自己資本利益率(%)11.527.915.5
株価収益率(倍)20.54.35.8
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)67,235149,78578,554
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△29,866△49,338△48,156
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△18,370△61,061△18,546

昭和電工の注目ポイント

無機材料分野の躍進で経常利益15%越え

本年の経常利益の8割以上を占める無機材料の中でも黒鉛電極による躍進が大きい。そのキーポイントは中国やアメリカによる電炉鋼の需要増である。

電炉鋼とは鉄スクラップをリサイクルする手法。電炉鋼生成には黒鉛電極を用いて鉄スクラップを溶融する必要があるため、大量の黒鉛電極が必要となり価格が急上昇した。

ESG(環境・社会・ガバナンス)関連に多額の資金が投じられるようになった近年だからこそ得られた躍進といえる。

併せてちょうどよい時期に昭和電工カーボン・ホールディングGmbHの連結子会社化していたことも利益の倍増に繋がりました。先見の明ですね。

薄利で様々な事業に手を出している

直近2年を除けば過去三年間は営業利益率5%程度で堅調に推移していました

大きな付加価値を恒常的に生む事業を持っているわけではないが、浅く広く様々な製品を持っている。悪く言えばシナジーがないけれど製品を扱っているバリエーションが凄い。

そのため一製品の市況がダメになっても、他製品の利益でカバーできるためヘッジになるメリットに目を向けたい。

また日立化成の買収によって製品の幅がさらに広がった。

財務的に日立化成買収費用は重くのしかかる

安定して平均以上の利益を出しているだけでなく、自己資本比率20%と低めで危ない状態です。銀行からお金をかき集めて買収したため、もし他に何かトラブルが起きると対処できない可能性も。

営業CFはプラスで推移しており、設備投資も積極的に行われているため問題なし。流動資産が流動負債の2倍弱になるように立ち回っているため資金が焦げ付く心配は今のところない。

10年後も生き残っている企業であり、化学系技術職の就職先候補の一つとして問題ない優良企業。先行きは今後の社会動向次第だが、黒鉛電極の例のように市況環境変化に強い、幅広い製品ラインナップはメリットと捉えている。

ただ買収で4790億円ものれんが増加して財務を圧迫します。この悪いイメージを払拭するには相当に業績を向上させるしかないですね。不退転の覚悟で挑む昭和電工がどうなるか楽しみですね。

日立化成株式会社を完全子会社化

TOB(株式公開買い付け)により9640億円で日立化成株式会社を完全子会社化することが発表されました。2750億円の優先株式発行やみずほ銀行からの4000億円融資で財務状態の悪化を緩和する方針。

しかし売上高1兆円の企業が1兆円の現金を利用するのは厳しい。数年間は資金繰りが厳しくなることは容易に予想される。また人事面では日立化成から大量の人材が得られること、資金がないことから新卒募集は規模が縮小されると予想される

日立化成は電子材料などを強みとする売上高7000億円規模の部材メーカーなので電子機器を扱う昭和電工とシナジーはある。

子会社化が完了すると売上高1兆6000億円規模の巨大企業となりため、互いの商流や技術を融合させて売上利益を伸ばせるかは今後の注目点である。

昭和電工の就活情報

学歴ボーダーライン

技術系総合職は上位国立以上がメイン。東大や阪大などのトップ大学は少なめ。化学系院卒ならば十分に勝機はある。

就活選考フロー

個別説明会 ⇒ ES提出 ⇒ 面接(数回) ⇒  最終面接 ⇒ 内々定

昭和電工の事業分野一覧

石油化学

オレフィン、有機化学品、合成樹脂等の製造・販売

化学品

機能性化学品、産業ガス、基礎化学品、情報電子化学品等の製造・販売

エレクトロニクス

ハードディスク、化合物半導体、レアアース磁石合金、リチウムイオン電池材料等 の製造・販売

無機

黒鉛電極、セラミックス、ファインセラミックス等の製造・販売

アルミニウム

コンデンサー用高純度箔、レーザービームプリンター用シリンダー、押出品、鍛造品、熱交換器、飲料用缶等の製造・販売

昭和電工マテリアル

買収した日立化成の事業そのものを記入する欄です。次からの連結ではこの項に日立化成の業績が記されるようです。

重要な沿革

年月日出来事
明治41年12月当社の創業者森矗昶氏、沃度(ヨウ素)の製造販売を目的として総房水産㈱(日本沃度㈱の母体)を設立
昭和3年10月昭和肥料㈱設立
昭和6年4月国産法(東京工業試験所法)による硫安の製造に成功
昭和9年1月日本沃度㈱ 国産アルミニウムの工業化に成功
昭和14年6月日本電気工業㈱、昭和肥料㈱の両社合併、昭和電工株式会社設立
昭和24年5月東京証券取引所等に上場
平成13年3月昭和アルミニウム㈱を合併
平成15年1月三菱化学㈱グループのハードディスク事業を買収(現社名:昭和電工HDシンガポール・プライベイト・リミテッド)
平成15年7月東京証券取引所に上場を一本化
平成29年10月黒鉛電極事業を営むSGL GE Holding GmbHを買収(現社名:昭和電工カーボン・ホールディングGmbH)
令和元年12月日立化成株式会社をTOBにより完全子会社化することを発表

中期経営計画②「The TOP 2021」

グループ経営理念を実現するため、当社グループとしてMission/Vision/Valueを定めてます。面接時の引き出しとして目を通しておけばいいと思います。

Mission(使命・存在意義)すべてのステークホルダーを満足させる
Vision(目指す姿)営業利益率10%以上、営業利益額数十億円以上、環境変化による収益変動が少ない。
Value(Vision実現の手段)CUSTOMER Experience(顧客体験価値)の最大化

今後の研究方針

石油化学

 主要な誘導品事業であるアセチル及びアリルアルコール製品群では、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めている。

 アリルアルコール製品群において、環境対応型溶剤である酢酸ノルマルプロピルの更なる市場拡大を企図して新規用途の展開を進めている。

 耐熱透明フィルム「ショウレイアル®」をモバイルディスプレイ材料などの分野に向けて精力的に市場開拓、ガラスに匹敵する光学特性と手触り感が評価され、国内外で採用されている。

化学品

 大型液晶ディスプレイに使用される各種製品で屈曲性に優れたチップ・オン・フィルム(COF)用ソルダーレジストは市場要求に合致し、販売を拡大している。

半導体や電子部品の放熱性を高めるカーボンコート箔テープ「HSシリーズ」に柔軟性を高めた新シリーズを拡充。

高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックス®カラム」では、先進国向けを主体に、最先端技術へ適用できるカラムを開発。

有機中間体では、当社固有原料と精密有機合成技術の強みを活かした各種中間体の開発に注力。

エレクトロニクス

発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力。

反射型LEDは、産業機器用光電センサーなどに採用されているが、本技術を発展させ、生体認証や監視カメラ、バーチャルリアリティ、車載センサーなど高出力が求められる用途に受注活動を促進。

希土類磁石合金では、ネオジム磁石用合金を製造する技術をベースにDyフリーを達成すべく技術開発中。

先端電池材料については、各種電気自動車用に加えスマートフォン等の携帯用など多様なリチウムイオン電池に必要な、寿命、入出力、低抵抗性、容量を満たす黒鉛負極材「SCMG®」などの素材・部材を開発中。

無機

スマートフォンなど多くの電子機器に用いられる積層セラミックコンデンサー(MLCC)の用途で更なる小型化・高容量化に貢献すべく、原料である超微粒子酸化チタンの材料開発に取り組んでいる

アルミニウム

圧延素材関連では、高熱伝導・高強度アルミニウム板材「ST60」の新グレード「ST60-HSM®」の開発を進めている。

アルミ缶では、グラビア印刷と同等の写真やグラデーションなど、諧調のあるデザインの再現性を向上できるインクジェット方式の印刷技術を開発。

新方式は製版・刷版工程が不要なことから、データ入稿から納品までの期間を大幅に短縮でき、小さなロットサイズでも生産可能と革新的な技術です

平均給与・勤続年数

従業員数(名)平均年齢(歳)平均勤続年数(年)平均年間給与(円)
3,347 39.9 16.3 7,604,163

昭和電工の従業員数は規模的には少なめです。勤続年数が16年というのは少し短い印象です。どこかにブラックな部署や人間関係が良くない部署がある可能性が高いかと。平均給与も業界では普通~やや高めの水準。

平均年間給与は参考程度に

平均給与額の算出方法がこれといって定められていないため、各社によって”どの職責までを平均に組み入れるのか”という基準が違います。

不当に低く見せたり、不当に高く見せたり自由自在です。

特にメーカーは社員の給与が高すぎると、それをダシにして取引先からもっと製品を安く売れとか恐喝されるので各社低めに算出する傾向があります

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